以上のようにハノイのベトナム人の印象を私なりに特徴づけてみたが、もとよりこれは半可通の見方である。しかし、ハノイには日本の茶道への憧憬が色濃くあると感じた。フォンドン大学からも茶道部の創設を要望された。茶芸の師匠からは日本の茶道研究のための援助も依頼された。

　私は深田駐越大使やハノイ茶道愛好会員らと話し合いを進めるうちにその感を強くした。今年は大宗匠のご指導ご後援の下に現地の人々と一緒に日本茶道の普及のベースを造りたいと念願している。

　近年、東南アジアの各国の首都は外資導入、経済成長、人口増加などによりまさに沸騰し、膨張し、発展している。顧みると私たち戦中派は大東亜共栄圏の理想に燃えて生命をかけて戦ってきた。独立を果たした各国の首都の近代化された大都市、発展を続ける経済を見る時、私はあの理想が実現されたとの感を禁じ得ない。

　もちろん時代も移り、世代も代わったが、あの理想の灯は新しい概念による、新しい枠組みの中で輝きを増していると私は思っている。私がこれらの国々に身内のような親近感を感じるのも戦中派の故かとも思っている。

　翻って、わが福島を見ると震災からの復興はまだまだ道半ばである。さらに少子化、人口減、高齢化と近未来の展望は明るくない。しかし目を転ずれば福島は大自然に恵まれている。やがてLCC（格安航空）が関西空港と福島空港の路線を飛ぶようになれば東南アジアはグーンと近くなる。物理的にも心情的にも東アジアは福島と隣り合わせになる。放射能の被害もやがて収束する。その時には有り余る彼らのパワーを取り込める。こうしてグローバル化が進む時代に福島が積極的に適応すれば福島の未来は極めて明るいと私は確信している。

 
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