■　沖縄と同じ問題を抱える

　問題なのは、彼らはけっして暮らしに窮乏しているのではないということ。チャモロ人は先住民族のため、土地を所有している。それらを転売することによって資産を持つか、あるいは起業するかのいずれかだ。
　外国資本による銀行、自動車販売、保険、流通などの大手企業の大部分に介入している。米国であるため、所得の少ない者には生活保護が設けられており、それに頼っている若者も多くいる。だから、貧しくはない。しかし、若者には希望が見えない。米本土へ移住することも可能だが、米本土における彼らグアミニアンはマイナリティの枠を乗り越えることが難しく、つまり差別があり、従って虚しく戻ってくる者が多い現実がある。
　島という限られた空間の中で、彼らの技術や知力を発揮する仕事が見つからないことが背景にある。そのため、若者の多くが軍隊に入ることを希望する。高校生活の中にもクラブとして軍隊のマーチ（行進）などがある。
　沖縄からの海兵隊移転問題は、グアムに大きなマイナスのインパクトを与えるのだが、このように親戚縁者が軍隊に入隊している分だけ米政府にものが言えなくなっている事情もある。
　グアムは沖縄と同じように観光が基幹産業で、これしか外貨を稼ぐ方法はない。そうすると、今回のような事件が起きて一番困るのは政府自身、次に観光で食べている観光局の役人、ツーリストが生活の糧である旅行会社、最後にそこで働く日本人を主体にした庶民という図式になる。
 

　■　ドル箱ツーリスト日本人

　残念ながら今回の事件の背景には、被害者が来島者の90％近くにもなるというドル箱ツーリスト日本人であったことから、グアム政府は迅速に対応、謝罪し、経費面での優遇処置などで対応している。意地の悪い見方かもしれないが、ともかくなんであれ、やることがのろい日ごろの活動と比較しても今回の対応の早さは驚きであった。
　この事件から学ぶべきことは、残念ながらほとんどない。どこにでもいる狂気じみた人間を、あらかじめ察知し、事前に武器や車を取り押さえることなど不可能であるからである。できることは、いかにイメージを貶（おとし）めないようにするかの工夫だ。
　イメージだけで観光が成り立っている観光地は、常にこうした事象にビクビクしなければならないのが現実である。
　さてグアムと福島県の観光事情はどのぐらい異なるのか。これはイメージが先行するハワイや東南アジアなど亜熱帯地方諸国に共通するテーマだ。
　機会があればいつか観光地グアム、その悩みと光を福島の観光と比較してみたい。