思いがけないことに出あって、あわてふためくことを表す四字熟語です。
【周章】は、①めぐりあそぶ、②あわてる・うろたえさわぐ状態を表す擬態語です。
シュウショウと読みまして二字とも「シ」で始まる、双声語と言われてます。
瀟洒:ショウシャ、髣髴:ホウフツ、滑稽:コッケイ、唐突:トウトツ、なども双声の擬態語です。
【狼狽】は、「狼」も「狽」もともに伝説上の動物で、
「狼」は前足が長くて後足が極端に短い動物、
「狽」は前足が短くて後足が極端に長い動物です。
「狽」が「狼」の後ろに乗るようにして二頭は常に一緒に行動すると言われていました。
離れると倒れてしまい、あわてることになります。それで【狼狽】は、あわてる意味になりました
【周章狼狽】の四字熟語では出典が見当たりませんが、【周章】、【狼狽】の熟語はあります。
【周章】は楚辞(ソジ)・九歌(キュウカ)・雲中君(ウンチュウクン)の中にでてます。
龍駕して帝服し、
龍に車を引かせ、天帝の服を着けて
聊(しばらく)翺遊(コウユウ)して周章す。
神はしばらく天駈(あまか)けりさまよい給う
【狼狽】は、晋の李密による『情事を陳(の)ぶる表』に出ていることが『字通』に載っていました。
苟(いやし)くも私情に順(したが)はんと欲せば、則ち告訴するも許されず。
臣の進退、實に狼狽を為す。
太宰治の『富嶽百景』に【周章狼狽】が、あわてふためくの意味で使われています。
私が言つてゐるうちに友人は、笑ひ出した。
「おい、見給へ。できてないよ。」
能因法師は、茶店のハチといふ飼犬に吠えられて、【周章狼狽】であつた。
その有様は、いやになるほど、みつともなかつた。
「だめだねえ。やつぱり。」私は、がつかりした。
類義語としまして、【右往左往:ウオウサオウ】
対義語としまして、【泰然自若:タイゼンジジャク】。