全力を出して努力することを表わします。また、骨身を惜しまず働くことも表わします。
【骨を粉にし、身を砕く】ほど、努力したり働いたりする意味です。
『禪林類纂:ゼンリンルイサン』に
粉骨砕身するも、此(こ)の徳に報(むく)い難(がた)し。
力の限り尽くしても、仏恩に報いるのは難しい。
『証道歌:ショウドウカ。禪の教えを説く歌』にも
粉骨砕身未だ酬(むく)ゆるに足らず
全力を尽くして努力しているのは解るが、まだまだだな。
【粉骨砕身】は、仏教系の書によく見られるのは解りますが、『唐代伝奇』に収められている
『霍小玉(カクショウギョク)伝』になりますとチョット違ってきます。
霍小玉といいますのは、女性の名前です。美人芸妓です。
『霍小玉伝』は恋愛小説の名作と言われています。あらすじは
長安の名妓霍小玉は、以前なじみであった詩人の李益(リエキ)と恋仲になりますが、
捨てられてしまい、悲しみのあまり病床に伏してしまいます。
一方の李益は、親の決めた盧(ロ)氏と結婚しようとします。
見かねた霍小玉の友人が、李益を霍小玉に対面させます。
事情を知らされた霍小玉は怨言慟哭して、息を引き取ります。
李益は結局、盧氏と結婚しますが霍小玉の崇りでしょうか別れてしまいます。
その後、2回の結婚を繰り返しますが、すべて破局を迎えたのでした。
【粉骨砕身】は、李益と霍小玉が仲良くしていた時のお話の中に出てきます。
ある夜、小玉は急に涙を浮かべながら李益を見つめていいました。
私は遊女の身。あなたと身分が釣り合わないのは存じております。このたびは私の器量を
お気に召していただき、こうしてお情けを受けておりますが、ひとたびこの容色が衰えてしまうと、
あなたのお情けもなくなり、お見捨てになられることでしょう。それを思うと悲しくなります。
この言葉を聞いた李益は胸を打たれ、抱き寄せながら静かに言った。
平生の志願、今日從ふことを獲(え)たり、
日頃の願いがこうしてかなったんだ。
【粉骨砕身】誓って相捨てず。
この身が粉々になったって、君のことを見捨てるものか。
夫人何ぞ此の言を發する
あなたはなぜそんなことを言うのですか。
『霍小玉(カクショウギョク)伝』の【粉骨砕身】は文字通り、骨を粉に、身を砕かれようとも、あなたを見捨てたりはしない。
と言う意味になるようです。