鬼気迫るものすごさを表す四字熟語です。
杜甫の【兵車行】という七言古詩に出てくるのですが、【鬼哭啾啾】とまとまった形ではなく、【鬼哭】と【啾啾】がばらばらに2行に渡ってでています。
【鬼哭】は、浮かばれない亡霊がうらめしさに泣いている様子を表します。【鬼】は、死者の靈で、節分の時に豆をまかれる、「鬼」とは違います。
【啾啾】は、小声で悲しげに泣く声をいいます。また、死者の魂が泣いている声でもあります。
【兵車行】は、七言×23、六言×2、五言×8、十言×1 から構成されている漢字223字の長い詩です。
この【兵車行】は、杜甫四十一歳の頃(752年)の作と言われています。
この頃は玄宗皇帝の時代で、国政が乱れ、それに乗じて周辺の異民族が反乱を起すという状態でした。
755年~763年に安祿山・史思明の乱が起こります。
【兵車行】は、「春望」と並んで、杜甫の詩の中でも最も名高いもののひとつです。
戦場に駆り立てられていく兵士とそれを見送る家族の悲しみと苦悩を描いた反戦詩です。
最期の部分を記載します。
君不見青海頭
君見ずや青海の頭(ほとり)
君たちは見ないか。あの青海のあたりでは
古來白骨無人收
古來(コライ)白骨(ハッコツ)人の收(おさ)むる無し
昔から白骨を片付ける人もなく
新鬼煩冤舊鬼哭
新鬼は煩冤(ハンエン)して舊鬼(キュウキ)は哭す
新しく亡くなった人の魂はもだえうらみ、古くに亡くなった人の魂は嘆き叫び
天陰雨濕聲啾啾
天陰(テンくも)り雨濕(あめうるお)うとき 聲(こえ)啾啾たり
天が曇り、雨で湿っぽくなったときに、亡霊の怨み泣く声がしくしくと聞えてくる。
昨日2月2日、平成25年度・第3回の漢字検定がありました。
1級の四字熟語の問題、10句の中5句が【鬼哭啾啾】を含めまして『今日の四字熟語』で取り上げたものでした。
No.77 【老驥伏櫪:ロウキフクレキ】
No.289 【尸位素餐:シイソサン】
No.478 【衆口鑠金:シュウコウシャッキン】
No.544 【旗幟鮮明:キシセンメイ】