非常に危ない瀬戸際のことをいいます。
【危機】は、生死の分かれ目となるような大事な時(おり)を表します。
【機】は、はた、からくり、はずみ、きざし、おり(しおどき、分かれ目)、かなめ、はたらき、
たくらみ、秘密、などいろいろな意味を持ってます。
【一髪】は、髪の毛一本ほどのすきまの意味です。
ひとつ間違えばどうなるか分からないという危ない状態をいいます。
ところが、多くの場合「危機一髪で助かった」というような使われかたをしますから、暗黙のうちにメデタシメデタシの気持ちが含まれています。
「危機一髪で大怪我をした」とはあまり言わないようです。
韓愈の文章にありますが、一本の髪の毛で千鈞の重さの物を引くという、今にも切れそうな危険な状態を表す喩えでした。
千鈞は、周代の重さでいきますと1鈞が7.68㎏ですから千鈞は7,680㎏となり髪の毛一本じゃとても無理です。
韓愈の「孟尚書に与ふるの書」の一文です。
漢氏已来(イライ)、群儒区区として修補すれども、
漢以降、多くの儒学者が、こまごまと補い繕(つくろ)ってきたが、
百孔千瘡、随つて亂れ随つて失う。
もはや百の穴、千の傷のために正道は乱れ失われ、
其の危ふきこと一髪の千鈞を引くが如し。
その滅びる危険さといったら、一本の髪の毛で千鈞の重い物を引くのとおなじである
綿々延々として、寖(ようや)く以て微減す。
その後は糸のようにかすかに続いて、今や滅び消えようとしている。
【危機一髪】を【危機一発】とするのは本来誤りです。