長い袖の衣をまとった人のほうが、上手に舞を舞うことが出来る、ということから事前に充分な準備がなされていれば成功しやすいということを表しています。
出典は『韓非子』五蠧篇です。
【長袖善舞】のところ、韓非子から現代の為政者へのメッセージです。長文につき口語訳のみ記載しました。
いま(外交を論ずる者は)みなこう言う。
外交こそは、天下に王たるの道、国を安定させる道である。
しかし、天下の王は他国を攻める力を持っている。また、内政が安定している国を攻めるのは難しい。
国が治まるとか強くなるとかは、外交によってはもたらされない。内政が確りしているかどうかなのだ。
国内の政治において法律と統御術を充分に行なわないで、外交に頭を使っていたのでは、国が治まり、
強くなる、と謂う訳にはいかない。
ことわざに言う。
【袖が長けりゃ、踊りはじょうず】、銭が多けりゃ、買い物じょうず。
資本が多ければ、何事もやりやすいということである。
だから国がよく治まり兵力が強大であれば、(外交の)計画がなしやすいのであり、乱れていて、弱ければ
計画も何もあったものではない。
だから、秦のような強国では、十回つまずいても失敗に終わることはまれだが、燕(えん)のような
弱国では、一回つまずいただけで成功ののぞみはほとんどなくなる。
秦の臣下の頭がよく、燕の臣下の頭がわるいというわけではない。内政という資本が相違するためだ。
国がよく治まり、兵力も強いことが、基本である。
これ以外のことは、為政者のなすべきことではない。
外交に頭を使いはたし内政を混乱させているようでは、もはや国を滅亡から救うことはできないのである。
韓非子の時代(紀元前200年)ですでに【長袖善舞】は諺になっていたのですね。
銭が多けりゃ、買い物じょうず、は【多錢善賈:タセンゼンコ】という四字熟語になっています。