【家(いえ)ごとに給(た)り、人(ひと)ごとに足(た)る】と訓読みされまして、すべての人も家も豊かで満ち足りていることを表す四字熟語です。
政治がうまく行われている様子を表現した言葉です。
政治がうまく行なわれて、【家給人足】が当たり前の状態になっている時には、殊更【家給人足】などと言う言葉は生まれません。
政治がうまくいってないから、【家給人足】が「翹望:ギョウボウ。首を挙げて待ち望む」されて生まれた四字熟語だと思います。
出典は『淮南子:エナンジ』本經(ホンケイ)訓・人間(ジンカン)訓です。
いずれも古代の聖人君主が善政を布(し)いていたであろう時代のことを表現した言葉です。
『淮南子』が纏められた時の千年以上も前のことなど誰も分からないのです。
本經訓の記述です。
古(いにしえ)は、聖人上に在(あ)り、政教平(たひら)かに、仁愛洽(あまね)く、
昔は、聖人が上にあって天下を治め、政教は平らかに、仁愛は洽く、
上下(ショウカ)心を同じくして、君臣輯睦(シュウボク)し衣食餘(あまり)有りて、
上下は心を一にして、君臣は和合し、衣食は有り余って、
家ごとに給り人ごとに足る。
どの家もどの人も充ちたりていた。
人間(ジンカン)訓の記述です。人間を「ジンカン」と読む時は「世の中、世間」を表します。
后稷(コウショク:周の始祖)、乃(すなは)ち之に地を辟(ひら)き草を墾(か)り
后稷は、彼らに土地を開墾し草を刈り、
土を糞(こや)し穀を種(う)うるを教え、
土地に肥(こやし)をやって穀物を植えることを教えて、
百姓(ヒャクセイ:)をして家給り人足らしむ。
人民の家ごとにゆきわたり、人ごとに足りるようにさせました。