ちょっと話しあっただけで、古くからの友人のように親しくなるたとえを表した四字熟語です。
【蓋】は車につけられた、日よけのような覆いを言います。それを少し傾けて開けるのを【傾蓋】といいます。
【蓋】を傾ける、と言うことで車を止めることを意味します。
【知己】は、【己を知る】と訓読みされまして、自分のことをよく知ってくれる友人を言います。
『孔子家語』致思篇に
孔子、郯(タン)に之(ゆ)き、塗(みち)で程子(テイシ)に遭う。
蓋を傾けて語る。
終日、甚(はなは)だ親(した)し。
とあるところから【程孔傾蓋:テイコウケイガイ】の言葉が生まれました。
程子が誰であるかも分からず、孔子と特に親しいという記録もないことから、それほど親しくない者同士でも、話しあってみると、古くからの友人のように親しくなれるというたとえに使われるようになりました。
『史記』鄒陽(スウヨウ)伝にも【傾蓋知己】の類義の言葉がでています。
鄒陽が讒言にあって梁(魏)の牢屋に繫がれた時、獄中から上書した中に
白頭(ハクトウ)新(シン)の如く、
若いころから交際して白髪頭になるまで友人でいても、
新しく知り合った人のように親しまぬ者もあり
傾蓋(ケイガイ)故(コ)の如し
途(みち)で遇って車の蓋いを傾けて近づき、ちょっと話あっただけで、
古くからの友人のように親しくなれる者もあります。
交友の深さは、年月の長短ではなく相手の心を知る深浅によるようです。