病気をしないで健康であることを表した四字熟語です。
【無】は、舞う人を象(かたど)った象形文字です。【無】は「舞」のもとの字です。
衣の袖に飾りをつけ、袖をひるがえして舞う人の姿です。有無の「ない、なし」の意味に用いるのは、
その音を借りる「仮借:カシャ」の用法です。
無がもっぱら「ない、なし」の意味に用いられるようになって、【無】に「舛:左右の足が外に向かって
開く形で、舞うときの脚の形」を組み合わせた「舞」が「まう、まい」の意味に使われるようになり
ました。
【病】は、疒+丙(音符号)から作られた形声文字です。
【無病】は、病気が無いことから、病気にかかってないことをいいます。
【息】は、自と心とを組み合わせた形の会意文字です。
自は正面からみた鼻の形です。これに心を加えて心の状態が呼吸にあらわれることを「いき」と
いいます。また「休息」「終息」という熟語から、「やすむ、いこう、やむ」という意味にも
用いられます。
【災】は、巛+火を組み合わせた形の会意文字です。「巛」は水流がふさがれて溢れ流れることを表す
記号でした。洪水のわざわいを言ってましたが、巛に火を加えて火災を言うようになりました。
後に「災」は水災、火災だけでなく、すべての「わざわい」をいうようになりました。
【息災】は、災いをとどめるという意味です。仏教では、仏の力で災いをとどめることを言うようです。
徳富蘆花の小説『不如帰』で、武男が浪子に宛てた手紙の中に【無病息災】が出ています。
去る五月は浪さんと伊香保にあり、蕨採りて慰みしに今は南半球なる豪州シドニーにあり、
サウゾルンクロッスの星を仰いでその時を想う。奇妙なる世の中に候。先年練習艦にて遠洋航海の節は、
どうしても時々船暈を感ぜしが、今度は【無病息災】われながら達者なるにあきれ候。
しかし今回は先年に覚えなき感情身につきまとい候。航海中当直の夜など、まっ黒き空に金剛石をまき
散らしたるような南天を仰ぎて、ひとり艦橋の上に立つ時は、何とも言い難き感が起こりて、
浪さんの姿が目さきにちらちらいたし(女々しと笑いたもうな)候。
1月7日 新聞の「コラム」
七草は早春にいち早く芽吹くことから邪気を払うといわれ、【無病息災】を祈って食されるもの。
お正月の疲れた胃腸を癒やし、家族全員の健康を願いながら召し上がっていただければ。
春の七草、 芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、蘩縷(はこべら)、
仏(ほとけ)の座(ざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)