松や柏(こてがしわ)の寿命を言うことから、長寿を讃えた言葉です。
白居易の『陶潜(トウセン:陶淵明)の体に傚(なら)ふの詩。十六首』と題した詩の第一首に【松柏】が詠まれています。同時に動物として【鶴亀】も詠まれています。
白居易(772年~846年)は中唐の詩人です。字は楽天。
李白、杜甫など唐詩の黄金時代をつくった「盛唐の詩人」の跡継いだのが白居易であり韓愈でした。
白居易の代表作は『長恨歌:チョウコンカ』『琵琶行:ビワコウ』『新楽府:シンガフ』などです。晩年仏教に帰依しました。
少々長い詩ですが、読み下し文と、私訳を記載します。
動かざる者は、厚地 動かざるものは、大地。
息(や)まざる者は、高天。 休まざるものは、天空。
無窮なる者は、日月 窮りなきものは、日月。
長(とこし)へに在る者は、山川。 長しえなるものは、山川。
松柏と龜鶴と 松、柏、亀、鶴
其の壽(よはひ)、皆(み)な千年。 その寿命は、みな千年。
嗟嗟(ああ)、群物の中 万物の中、
而も人のみ獨(ひと)り然(しか)らず。 人のみ、そうはあらず。
早に、朝市を出で 早朝、街を出て
暮には已に、下泉に 歸す。 薄暮、黄泉の客。
形質及び壽命は 肉体と寿命は。
危脆なること、浮煙の若(ごと)し。 あやうきこと、浮雲の如し。
堯舜と周孔と 堯、舜、周公、孔子
古來、聖賢と 稱す。 古来、聖賢なり。
借問す、今 何(いづ)くにか在る 古来の聖賢、今いずこ。
一たび去りて、亦た 還(かへ)らず。 一たび去って、また帰らず。
我に、不死の藥 無く 我に、不死の薬なし。
萬萬、化遷に 隨ふ。 万物、流転に随(したが)い
未だ定かに知らざる所の者は 明らかならざるは
修短 遲速の間。 長寿、短命、遅死、早死。
幸ひに、身の健かなる日に 及びて 幸いなるかな、日々強健。
當(まさ)に、一尊の前に 歌ふべし。 一杯の酒を、歓ぶべし
何ぞ必ずしも、人の勸めるを 待たん 他人(ひと)の勧酒を待つこと無し。
此れを持して、自ら歡しみを 爲さん。 自ら愉(たの)しむのみ。
【今日の四字熟語】を読んで頂いた方にとって、甲午(きのえうま)がよい年でありますように。