百回戦って、百回勝つ。連戦連勝が文字通りの意味です。
しかしこの四字熟語が春秋時代の兵法家、孫武の『孫子』を出典としているということになりますと、意味合いが、ガラっと変わります。
孫武(ソンブ:?~B.C.535年頃)は、春秋時代の呉の兵法家で、呉王(ゴオウ)闔閭(コウリョ)に仕えその著と言われている『孫子』は後世、兵法の祖となりました(自著ではないそうです)。
孫武自身は好戦的ではなく、止むを得ず戦いに至るときは
「戦わずして勝つ」ことをまず考え「諜報活動」を積極的に行い「防衛第一」とし、実戦にあたっては「短期決戦」に持ち込む。
ということを主張してます。そのことを具体的に述べられているのが『孫子』です。
好戦的ではないことを最もよく表しているのが『孫子』謀攻(ボウコウ)篇の
【読み下し文】 このゆえに、百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。・・・・・・・その下は城を攻む。城を攻むるの法はやむを得ざるがためなり。
【意訳】こういう訳だから、百回戦って、百回勝つというのは、最善ではない。 戦わないで敵を屈服させるのが、最善である。・・・・・最悪なのは敵の城を攻めることである。城を攻めるということは、他に方法がなく止むを得ない時にのみ行われる。
です。
『孫子』謀攻篇の最後は、意訳ですが 次のように結ばれています。
敵を知り己を知れば、百戦して危うからず
敵を知らず己を知るは、勝敗、交々(こもごも)なり
敵を知らず己を知らざれば、戦うごとに危うし。
孫武の『孫子』はビジネスに限らず、何か成果を得ようとする時に、一読してみる価値はありそうです。
孫武の『孫子』と言ってますのは、1972年に発見された孫臏(ソンビン:戦国中期・斉の威王に仕えました)の兵法書と区別するためです。