思いやりがなく、むごたらしいことを表す四字熟語です。
【残忍】も【酷薄】も、むごくて思いやりの無い様子を表します。
【残(殘)】は、「歹+戔(音符号)」から作られた形声文字です。音符号の戔:サンは薄く小さいものを
重ねた状態を表しています。歹は殘骨の形です。
バラバラになって僅かに殘されている骨を「殘」といいます。
獣が獣を食い散らす様子を「残虐」、「残酷」といいます。
それで「殘」は「のこる、そこなう、むごい」の意味となります。
【忍】は、「刃+心」から作られた形声文字です。骨と骨とを結びつける靭帯(ジンタイ)と関係のある字
だそうです。強靱の意味を人の心に移して「たえる、しのぶ、がまんする」の意味となりました。
また、「むごい、おもいやりがない」の意味もあります。
【残忍】は「むごい」ことを表す擬態語です。「殘:ザン」、「忍:ニン」と両字とも語尾が「ン」で
終わっている畳韻(ジョウイン)語と言われています。
『三国志』魏・董卓(トウタク)伝にある【残忍】です。
董卓、性残忍不仁、遂に厳刑を以て衆を脅(おびや)かし、
董卓は性格が残忍非情で、厳しい罰で人々をおどしつけ、
睚眦(ガイサイ)の隙(ゲキ:争い)にも必ず報じ人々自ら保たず
わずかな怨みにも必ず報復したので、人々は自分の安全を保つことも困難であった。
【酷】は、「酉+告(音符号)」から作られた形声文字です。酒の味が濃厚なことを表しています。
濃い酒を言うことから、「きびしい、はげしい、ひどい」の意味となりました。
【薄】は、「艹+溥(音符号)」から作られた形声文字です。「尃」は広い範囲に行き渡らせるの意味が
あります。氵を付けて広い、大きいの意味になり、更に艹が付いて「うすい」と変化していきました。
【酷薄】も「むごい」ことを表す擬態語です。「酷:コク」、「薄:ハク」と両字とも語尾が「ク」で
終わっている畳韻語と言われています。
『金色夜叉』前篇第7章に【残忍酷薄】がでています。
・・・・。これが為に慰めらるるにはあらねど、その行へる【残忍酷薄】の人の道に欠けたるを
知らざるにあらぬ貫一は、職業の性質既に不法なればこれを営むの非道なるは必然の理(ことわり)
にて、己(おのれ)の為(な)すところは都(すべ)ての同業者の為すところにて、
己一人(おのれいちにん)の残刻なるにあらず、高利貸なる者は、世間一様に
如此(かくのごと)く残刻ならざるべからずと念(おも)へるなり。
【残忍酷薄】は、人の道に外れたむごいこと。
『広辞苑』によりますと、独裁政党などで、方針に反する者を排除することを「粛清」と言うそうです。