知識がなく、物事の道理を知らないことを表す四字熟語です。
知識・学問に乏しい人、また理屈の通らない人をあざけって言うことが多いようです。
【無】は、舞う人の姿を表した象形文字です。「舞」のもとの字です。
衣の袖に飾りをつけ、袖をひるがえして舞う人の姿です。
有無の「ない、なし」の意味に用いるのは、その音を借りる仮借(カシャ)という用法です。
無がもっぱら「ない、なし」の意味に用いられるようになって、無に舛(セン:左右の足が
外に向かって開く形で、舞うときの足の形)を組み合わせた舞が「まう、まい」の意味に
使われるようになりました。
【知】は、矢(シ)と「口」とを組み合わせた会意文字です。
矢は神聖なものとして、神との誓約のときにそのしるしとして矢を用います。
「口」は、祝詞を入れる器の形です。
【知】は神に祈り、神に誓うことを表す字として作られました。
【無知】は知識や学問の無いことを言います。
【蒙】は、頭も付いた獣皮の形からできた象形文字です。「くさかんむり」になっているところが獣の頭です。
草とは関係がありません。呉音:モウ、漢音:ボウです。意味は「おおう。こうむる。くらい」です。
【昧】は、「日+未(音符号)」から作られた形声文字です。音は呉音:マイ、漢音:バイです。
意味は、夜明けをいうのが原義でしたので、夜のまだ明けきらない、ほの暗い状態であることから、
「くらい」の意味に用いられます。
【蒙昧】は、物事の判断にくらいこと、愚かで道理にくらいことを表します。
芥川竜之介『邪宗門:ジャシュウモン』に【無知蒙昧】がでています。
その方どもの罪業は無知蒙昧の然(しか)らしめた所じゃによって、天上皇帝も格別の
御宥免(ゴユウメン)を賜わせらるるに相違あるまい。
突発的に訳も分からず勝手なことを言い出すのは、【無知蒙昧】以外の何ものでもないように思います。