【縄を引きて根を批(ひら)く】と訓読みされまして、縄をつけて引き、根こそぎ取り払うことを表した四字熟語です。
力を合わせて他を排斥する意味でもあります。
【批根】の【批】は、漢音「ヘイ」で意味は「打つ」、「正す」、「ひらく。おしのける」などがあります。
「ヒ」と読むのは慣用読みです。
条約を批准(ヒジュン)する、の批准も本来は「ヘイジュン」でした。
前漢の高官・灌夫(カンプ)と親友・魏其侯(ギキコウ)は、権力があったときに自分達に近づいて、いい思いをしていた者たちが権力を失ってしまってから、一斉に背を向けてしまいました。
根こそぎやっつけてやりたいと思って【引縄批根】してやろうと考えました。
『史記』魏其・武安侯(ブアンコウ)列伝の一節です。
灌夫家居(カキョ)して富むと雖(いえど)も、然(しか)れども勢ひを失ひ、
灌夫は家に閑居して裕福ではあったが、権勢を失い、
卿相(ケイショウ)侍中(ジチュウ)の賓客(ヒンカク)益々衰ふ。
大臣や侍中・食客の数は減っていった。
魏其侯の勢ひを失ふに及び、亦た灌夫に倚(よ)りて
魏其侯は勢力を失うと、自分や灌夫にくっついて、
生平(セイヘイ)之(これ)を慕ひ後之を弃(す)つる者を
これまで慕って来ながら、あとになって見捨てた者を
【引縄批根】せんと欲す。
排斥しようとした。