この世のありとあらゆるものごとやできごとは、実体がなく空であるということから、
人の一生がはかないことのたとえを言った四字熟語です。
「夢」、「幻」、「泡」、「影」は、どれもすぐに消えてしまうはかないものであることから、
この世のすべての象徴として、四文字を連ねた言葉にしたようです。
【夢】は、莧+夕の組み合わせによる会意文字です。莧は眉を太く大きく描いた
巫女(神に仕える女)が座っている形です。
大昔【夢】は呪術を行う巫女が操作する霊の作用によって夜(夕)の睡眠中に
あらわれるものと考えられていました。
【幻】は、象形文字です。織機(はたおり)のたて糸の間によこ糸を通す道具の
杼(チョ。ひ)を逆さまにした字です。杼が左右に往き来して巧みに布を
織りなすので、【幻】は人を「まどわす」の意味となりました。
【泡】は、氵+包の組み合わせによる形声文字です。音符号の「包」は人の腹の中に
胎児のいる形で、中につつみ込むの意味があります。そのように水が空気を含み、
ふくらんだ状態となっているものを「泡」といい、あわの意味となりました。
【影】は、景+彡の組み合わせによる会意文字です。景は日と京(出入り口がアーチ形の
城門)からできた文字で、城門を使って日影を測り時刻を決めたようです。
「彡」は光や音・形・色などが美しいことを示す記号のような文字です。
結局【影】は、光に反映し、かげる状態を表し、かげ・ひかりの意味となりました。
【影】を「ヨウ」と読むのは、呉音読みです。漢音読みは「エイ」です。
【夢幻泡影】は『金剛般若経』の最終節にでています。
一切の有為法は、
この世のありとあらゆるものごとやできごとは
夢幻泡影の如く
ゆめ、まぼろし、うたかた、かげ のよう
露の如く、また、電の如し。
はたまた、つゆ や いなびかり
まさにかくの如き観を作すべし。
まさにそのようなものと、見るがよい
日本では、専ら人生のはかなさを嘆く言葉として使われています。