【仁者は敵なし】と訓読みされまして、仁者には敵対する者はいない、と言う意味です。
国民を愛して仁政を行う為政者(すなはち仁者)には、国民は心から信頼を寄せるので、敵となって逆らう様な者など一人もいない、と言うことになります。
『孟子』梁恵王・上篇にでている四字熟語です。
中国戦国時代、梁(晋が、韓・魏・趙に分かれたときの魏の国のことを言います)の恵王(B.C.370~B.C.319)が、齊・秦・楚の大国の侵略に対して、なにか即効的な政策がないものか孟子に質問しました。
その時の孟子の答です。
天下の王となるには、(政治次第ですが)百里四方(約40km四方)の土地で、十分なのです。
王が仁政を行って、
①刑罰を軽くし、②税を低くし、③農地を深く耕して、草取りを早めにさせる。
そして若者たちには空いた時間を使って、
①親への孝行(孝)、②年長者への尊敬(悌)、③主君への忠誠(忠)、
④他人との約束を果たす心(信)の徳目を学ばせる。
家の中では父兄に仕え、社会では年長者に仕えさせたならば、
王は(武器などではなく)杖一本持つだけで、秦と楚の強力な兵を撃ち破ることができるでしょう。
なぜか、といいますと。ああいった国(敵国)は全く正反対のことをやっているからです。
そんなとき、仁政を施す王がご征伐にゆかれたら、王に敵対できる者などどこにいるでしょうか。
諺にある『仁者に敵なし』とは、つまりこのことを言ったものです。
王よ、どうか私の申すことを、ゆめゆめお疑いなさいますな。