【脂(あぶら)に画(えが)き氷(こおり)に鏤(ちりば)む】と訓読みされまして、
油に絵を描いたり、氷に彫刻したりするのは、苦労しても効果の無いことである。と言うことから
「無駄なことをする」例えに使われる四字熟語です。
【画】は、「聿(ふで)+乂(交差する図形)」から作られた象形文字で、筆を手にして交叉する図形を
描いている様子を文字化しました。
西周金文で「聿+田+一】の会意文字として【畫】が作られ、絵を描く意味になりました。
常用漢字体の【画】は、【畫】を省略した字です。
【脂】は、「月(にくづき)+旨」の形声文字です。「旨」は器にあるものを肉切り用の小刀で切る形で、
旨い肉を表します。
月(肉)と旨とを組み合わせて美味な肉であることを示し、美味な肉は脂(あぶら)ののったもので
「あぶら」の意味となりました。
「脂」は動物性の固体の「あぶら」、「油」は植物や鉱物から採れる液体の「あぶら」をいいます。
【鏤】は、「金+婁(ロウ:音符号)」から作られた形声文字です。「ほ・る。きざ・む。ちりば・める」の
意味があります。
【氷】は、「こおり」がこおっている形から作られた象形文字です。
【画脂鏤氷】は『塩鉄論:エンテツロン』の殊路(シュロ)篇にでています。
『塩鉄論』は前漢の桓寛(カンカン)による書で、当時の塩・鉄専売制度の是非について論議したものです。
内無其質、
内に其の質無くして、
内部にそれだけの素質がないのに、
而外学其文、
外に其の文を学ぶ、
外部だけその飾りを学ぶのは、
雖有賢師・良友、
賢師・良友、有りと雖(いえど)も
賢い先生や友人があっても、
若画脂鏤冰。
脂に画き冰に鏤(ちりば)むるが若(ごと)く。
脂肪のかたまりに絵をかき、氷のかたまりにものを刻むようなものです。
費日損功。
日を費(ついや)し、功を損す。
日を消費し、手間を損します。