【突(トツ)を曲(ま)げ薪(たきぎ)を徙(うつ)す」と訓読されまして、煙突を曲げ、かまどの周りにある薪を他に移して、火事になるのを防ぐ意味から、災難を未然に防ぐことのたとえに使われる四字熟語です。
【曲】は、象形文字で、竹や蔓(つる)などを細くして編んで作った籠(かご)の形からできました。
竹や蔓などを曲げ、細かく編んで作るので、「まがる、まげる」などの意味となります。
【突】は、会意文字で、穴と犬とを組み合わせて作られた字です。説文解字に「犬、穴中より
暫(には)かに出(い)づるなり」とありまして、穴から犬が急に飛び出す意味と解説して
います。
【徙】は、「辵+止」からできた形声文字です。足を早めて行く、うつるの意味を表します。
「徒:ト」の字に似ていますが別字です。
【薪】は、「艸(艹)+新」からできた形声文字です。音符号の新は、「たきぎ」の原字です。
新が「あたらしい」の意味に用いられるようになったため、艸(くさかんむり)をつけて
「薪」の字になりました。
【曲突徙薪】は、『漢書(カンジョ)』霍光(カクコウ)伝と『十八史略』にでています。
前漢の10代皇帝は、名君の誉れ高い宣帝(センテイ:B.C.74~B.C.49)でした。
驃騎(ヒョウキ)将軍霍去病(カクキョヘイ)の弟霍光(カクコウ)は独裁を行い、
それを見るに見かねた徐福(ジョフク)が宣帝に三度も上書したのですが、上書が取り上げられることは
ありませんでした。
そのうちに、霍一族の驕(おご)りが激しくなり謀反を起こしましたが、一族は帝によって滅ぼされました。
霍一族が滅ぼされたのを知って、一族の権勢を恐れていた連中もあれこれと、非難を上書するようになり、
その連中は皆いい思いをしました。
徐福は予め用心を提案したのですが、ご褒美は何もありませんでした。
事件が終わってから、あれこれ上書した連中がご褒美を貰ったことに腹を立てたある大臣が徐福の為に、
上書しました。
ある客が、ある家の主人を訪れ、その家の竈(かまど)の煙突がまっすぐで、
そばに薪が積んであるのを見て、
煙突を曲がったものに改め、薪を遠くに移した方がいいですよ。
さもないと火事になりますよ、と言いました。
主人は黙って返事をしませんでした。
そのうち、その家は火事になってしまいました。