【聚蚊、雷を成す】と訓読みされまして、小さな蚊の羽音も、大群になれば雷のような音になるということから、小さいものでも、数多く集まると大きな力や影響を及ぼすという意味を表します。
【聚】は、「乑+取」からできた形声文字です。
「乑」は、人の字を三つあわせて、人が並び集まる意味を表します。
「取」は、音を表すのですが、「耳+又(手)」から作られた会意文字でもあります。
戦場で討ち取った敵の左の耳を、証拠として手で切り取ることを「取」といいました。
【蚊】は、羽音のブンを文字化して作られたようです。
【成】は、「丨(かざり)+戈(ほこ:武器)」から作られた会意文字です。成は「戈」の制作が
終わり、飾りをつけて祓い清めることを示し、「なる、なす」の意味となりました。
【雷】は、「雨+畾(ライ)」から作られた形声文字です。
『漢書』景十三王伝のなかで、中山靖王(チュウザンセイオウ)勝(ショウ)が、
役人の讒言(ザンゲン)で自分達は困っていると【聚蚊成雷】の言葉を使って武帝に訴えています。
それ沫(あわ)も多く集まれば山をも漂わせ、蚊も群がり飛べばその声、雷のごとく、徒党が口を合わせて
言えば虎となって偽をも眞となし、十人が力を合わすならば槌(つち)をも曲げます。
その影響で、
むかし文王は牖里(ユウリ)で拘禁(コウキン)され、孔子は陳・蔡で難儀しました。
これは衆人によって成った風潮が積もり積もって害を生じたのであります。
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そして役人が侵害したことがらをつぶさに上申しました。
小さなものが集まって大きな力になる、と言われるとついプラスイメージに理解しがちですが、
『漢書』のなかでは、むしろエライ迷惑、下手すると命さえ失いかねないお話として【聚蚊成雷】が
使われました。