罪なき人々を言う言葉ですが、人為、天災もろもろの被害を受けた人々を言います。
【無辜】の【辜】は、「辛+古」から作られた形声文字です。
「辛」は入れ墨をするための針の象形です。
古は音を表すのですが、固くとざすと言う意味ももっていまして、
結局【辜】は、罪人に入れ墨をし、固く閉じ籠めるの意味から、「つみ」の意味を
表すようになりました。
『書経』湯誥(トウコウ)篇に出てきます。
殷の湯王(トウオウ)が夏(カ)の桀王(ケツオウ)を滅ぼした際の勝利宣言のなかで【無辜之民】が使われました。
爾(なんじ)萬方(バンポウ)の百姓(ヒャクセイ)、
汝たち万邦の人々は
其の凶害に罹(かか)り、荼毒(トドク)に忍びず、
その害悪を受けて、ひどい苦しみに堪え切れず、
竝(あまね)く無辜を上下(ショウカ)の神祇(シンギ)に告ぐ。
広く無実の罪を天地の神々に訴えたのである。
天道は善に福(さいはひ)し
天の道理というものは、善なるものには幸いを与え、
淫に禍(わざわひ)す。
間違ったものには禍いを与えるものである。
災を夏に降して、以て厥(そ)の罪を彰(あきらか)にす。
そこで、天は災禍を夏に降すことによって、その罪を明らかにしたのである。
【無辜の民】は、罪なき人々、
【無告の民】は、苦しみを訴えることが出来ない人々です。