自然の風景に親しみ、風流を好んで楽しむことを表す四字熟語です。
【風に嘯(うそぶ)き月を弄(もてあそ)ぶ】と訓読みされます。
【嘯】は、「口+肅」の形声文字です。口をすぼめて声を出すこと、の原義から「うそぶく」の意味となりました。音を表す【肅】は、「聿(ふで)」と「コンパス」から作られた会意文字です。コンパスによって輪郭をえがき、筆で仕上げて模様を加えることを粛(肅)といいます。緊密な模様を示す字でもあります。
常用漢字では「静粛」の「粛(肅が正字体)」として使われています。
【弄】は、「玉+廾」から出来た会意文字です。両手(廾)で玉を持つ形から、「もてあそぶ」の意味が生まれました。
【嘯風弄月】は、太平記巻一「儲王(ちょおう)御事(おんこと)」に出ています。「儲王」と言いますのは「皇太子」のことです。
中にも第一宮尊良(たかよし)親王は、御子(みこ)左(ひだりの)大納言為世(ためよ)卿(きょうの)
女(むすめ)、贈従三位(ぞうじゅさんみ)為子(ためこ)の御腹にて御坐(おはせ)しを、
中でも、第一宮、尊良親王は、母親が左大納言二条為世卿の娘で、死後贈られた
従三位為子ですが、
吉田内大臣定房公(さだふさこう)養君にし奉(たてまつり)しかば、志学の歳の始より、
六義(りくぎ)長じさせ給へり。
吉田内大臣定房公が養子にし、十五歳の初め頃より和歌の道にその才能が
あらわれてきました。
されば富緒(とみのお)河の清き流を汲(くみ)、浅香山の故き跡を蹈(ふん)で、
だから富雄川(生駒山に源を発し、大和川に合流する川。歌枕)の清らかな
流れに心を動かし、浅香山に古くからある事跡を求めて
嘯風弄月に御心を傷め給ふ。
風に吹かれたり、月を愛でたりして、自然の風景、現象に感激されました。
今日は、「中秋の名月」です。9月19日(旧暦8月19日)の月を言います。今日だけの月です。
秋三か月を孟秋(モウシュウ:8月)、仲秋(チュウシュウ:9月)、季秋(キシュウ:10月)にわけます。
人偏の付いた「仲秋の名月」は、9月19日以外の「仲秋」の月をいいます。
ですから 明日の月も、明後日の月も、明々後日の月も、みな「仲秋の名月」です。
「中秋の名月」は「仲秋」のど真ん中の満月です。