【羽化して登仙す】と訓読みされまして、羽が生えて仙人となって天に登るような気持ちであると言う意味です。
【仙】のもとの字は、【僊】です。白川静博士の説によりますと、【僊】の旁(つくり)は死者を両手で抱えて遷(うつ)す形だそうです。そうして板で囲った家に納め、風化するのを待って葬るので、その人を【僊】と言うようになりました。のち山中で修行し、「仙道(道術)を修めた人、やまびと」を【仙】といいます。
『常用字解』より。
【羽化登仙】は、蘇軾の『前赤壁賦:ゼンセキヘキフ』にでている言葉です。
壬戌(ジンジュツ)の秋(年)、七月既望、蘇子客と舟を泛べて、赤壁の下に遊ぶ。
元豐五年(1082年)の七月十六夜、わたし(蘇軾)は客とともに船を浮かべて、
赤壁の下に遊んだ。
清風徐(おもむろ)に来りて、水波興(おこ)らず。
清風がゆるやかに吹き、川面には波も立たない。
酒を挙げて客に蜀(ショク)して、明月の詩を誦し、窈窕(ヨウチョウ)の章を歌う。
酒杯を挙げて客に勧め、(詩経の)明月の詩を誦し、窈窕の章を歌った。
少焉(ショウエン)して月東山の上に出でて、斗牛(トギュウ)の間に徘徊(ハイカイ)す。
しばらくして月が東山の上に昇り、南斗星と牽牛星の間を徘徊した。
白露(ハクロ)江に横(よこた)はり、水光天に接す。
きらきらと光る露が長江に横たわって。水面の輝きは、空に接している。
一葦(イチイ)の如(ゆ)く所に縦(したが)ひて、
一艘の小舟の往(ゆ)くに任せて、
萬頃(バンケイ)の茫然(ボウゼン)たるを凌(しの)ぐ。
果てしなく広がる水面を越えて行けば、
浩浩乎(コウコウコ)として虚(そら)に馮(よ)り風に御(の)り、其の止まる所を知らず、
広々とした大きなさまは、大空によって風に乗って、漂うばかり
飄飄乎(ヒョウヒョウコ)として世を遺(わす)れて独立し、
飄飄として世間を離れて独り立ちし、
羽化して登仙するが如し。
羽が生えて、天に上って仙人となったかのようである。
今日は『牧水忌』です。昭和3年(1928年)9月17日 若山牧水が43歳で亡くなりました。
大の酒好きで一日一升程度の酒を呑んでいたと言われてます。肝硬変だったそうです。
幾山河 こえさりゆかば さびしさのはてなん国ぞ きょうも旅ゆく
白鳥は かなしからずや 空の青海のあおにも 染まずただよう
白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の酒はしづかに 飲むべかりけり