子が父母の恩に報いることを表す四字熟語です。
【慈】は、茲(ジ)+心から作られた形声文字です。意味は「いつく・しむ」です。
【烏】は、鳥の一画を欠いて、黒くて目の見分けがつかない鳥なのでカラスの意味を表します。
と言うのが、分かり易いのですが、金文などでは、死鳥を懸けた形で、鳥害を避けるために
作られた字であろう、と白川静博士は説明しています。
【烏】の部首が「鳥」でなく「灬:レッカ」なのはそのへんに理由があるのかなと思います。
【反】は、厂(がけ)+又(手)から作られた字で、急な崖に攀じ登ろうとすることから、主に反逆の
意味で使われた字です。そこから「かえす。かえる」の意味になりました。
【哺】は、甫(ホ)+口から作られた形声文字です。えさを口に含んで子に与えることで
「ふくむ。はぐくむ」の意味となりました。
『本草綱目』四十九・禽部、慈烏のところにある解説に基づいて作られた四字熟語です。
此の鳥の初めて生まるるや、母(はは)、哺(ホ)すること六十日。
烏は、生まれた時、親鳥が六十日間、その口に食べ物を含ませて養育し
長ずれば則(すなは)ち反哺(ハンポ)すること六十日、
子は成長すると、その恩に報いるため、六十日間親鳥に口移しで食べものを食べさせる
慈孝と謂う可(べ)し。
親孝行と謂うべきものだ
烏でさえ養育の恩に報いるのだ。ましてや人は父母の養育の恩に報いなければならないという教訓としてしばしば用いられます。
中国古典にいくつか見られます
雛(ひな)既に壮(ソウ)にして能(よ)く飛び、乃(すなは)ち食を銜(ふく)んで反哺(ハンポ)す。
晋 成公綏(スイ) 烏賦
烏鳥は其の母に反哺す。言うこころは我此の烏鳥之私情有り、乞(こ)ふらくは父母の養いを
畢(お)えんとす。 文選 李密 陳情表
今日は『敬老の日』です。