「木(き)に縁(よ)りて魚(うお)を求(もと)む」と訓読みされます。 木によじ登って魚を求めようとする意味から、目的にあった方法を取らないと、成果は得られませんと言うことを表す四字熟語です。
『孟子』の梁惠王(リョウ・ケイオウ)篇に出ています。
【読み下し文】
若(かくのごと)き為す所を以って、若き欲する所を求むるは、猶(なお)木に縁りて魚を求むるがごとし。
【意訳】
しかし、今、王が考えておられる方法で天下統一の望みを達成しようとするのは、木によじ登って魚を取ろうとするのと同じことです。
齊宣王(セイ・センオウ:B.C.342~B.C.324)が秦・楚を制圧して、覇者たらんとしていたとき、孟子にその心構えを、指摘忠告された場面で、喩え話として持ち出されたものです。
国民に対して仁愛、博愛をもって仁政を布くことが必至であることを説いたものです。
この梁惠王篇は現代でも為政者として傾聴に値する内容をもっています。孟子が後世へのメッセージとして残してくれたものじゃないでしょうか。
孟子は孔子の孫である子思(しし)の門人に学んで、諸侯に王道政治を説いて廻りますが特に目立った効果がないまま、晩年門人たちと『詩経』、『書経』の校訂や『孟子』七篇の編集に専念するのでした。自分の理想を実現させようとの意気込みが功を奏せず、失意に終わる人生は、敬愛する孔子の人生に酷似するものがあるようです。
母親は「孟母三遷」、「孟母断機」で有名な、あのお母さんです。
川柳二句
おっかさん、また越すのかと孟子言い。
まいご札、孟母は三度 書き直し。
『孟子(書名)』は儒教の経典「四書五経」の一つで、王道政治、易姓革命、性善説などが、諸侯との問答の中で自説を喩え話をふんだんに取り入れながら、解き明かしています。
「梁惠王上篇」から始まって「尽心下篇」に至る、14篇から構成されています。
「五十歩百歩」、「集大成」、「余裕綽々(ヨユウシャクシャク)」「似て非なる者を憎む」「自暴自棄」 ・・・・ 故事成語は豊富です。