進んだり退いたりすることを言います。状況が良くなったり悪くなったりすることです。
【一】には、いろんな意味があります。『漢語林』によりますと
①ひとつ、②ひとたび、③ひとつにする、④はじめ、⑤原理、⑥はじめる、⑦同じ、⑧まじりけがない
⑨あるひとつの、⑩もうひとつの、⑪ひとえに、⑫一様に、⑬なんと、⑭みな、⑮あるいは。
などがありまして、【一進一退】の【一】は、⑮あるいは、の意味です。
『管子』覇言(ハゲン)篇では
人主一喜一怒者謀也。
人主をして一喜一怒せしむるは謀(ボウ)なり。
一国の君主を喜ばせたり怒らせたりするのは、謀略の成否である。
國一輕一重者刑(形)也。
国をして一輕一重ならしむるは刑(ケイ:形のこと)なり。
その国が軽んじられるか重んじられるかは、形勢が不利か有利かによる。
令兵【一進一退】者權也。
兵をして一進一退せしむるは權(ケン)なり。
その国の軍隊が進撃するか退却するかは、その君主の権力にかかっている。
『荀子』修身篇では
故蹞歩而不休、
故(ゆえ)に蹞歩(キホ:半歩)して休まざれば、
だから、足を一歩ずつ出して歩いて休止しなければ、
跛鼈千里、
跛鼈(ハベツ:足の不自由なスッポン)も千里、
足の不自由なスッポンでも千里を歩き得るのであり、
累土而不輟、丘山崇成。
累土(ルイド)して輟(や)まざれば、丘山(キュウザン)も崇成(スウセイ)す。
土を積み重ねて手をゆるめなければ、高い丘や山でも出来あがるのである。
厭其源、開其瀆、江河可竭、
其の源を厭(ふさ)ぎ、其の瀆(トウ:水門)を開(ひら)かば、江河も竭(つく)す可(べ)く、
その水源を塞いで下流の水門を切り開けば、揚子江や黄河の水でさえ涸らしてしまえる、
【一進一退】、一左一右、六驥不致。
一進一退、一左一右すれば、、六驥(リクキ)も不致(いた)さず。
気の向くままに進んだり退いたり、左へ行ったり右へ行ったりしていたのでは
一日千里を走る駿馬でも目的地につくことは出来ない。