『人事を尽くして天命を待つ』と読まれることが多いのですが、中国古典『読史管見(トクシカンケン)』に記載されていますのは【人事を尽くして天命に聴(まか)す】となっています。「聴」に、音や言葉をきくという意味の他に、勝手にさせる、成り行きにまかせるという意味もあります。
人としてやるべきことは、すべてやった。あとは天にまかせるしかない、という意味です。
出典となっている『読史管見』は南宋(1127~1279 )の儒学者、胡寅(コイン:1098~1156)が「歴史を読んでの私見」としてまとめた書物です。
その中で、東晋の謝安(シャアン:320~385)が前秦の苻堅(フケン)を淝水(ヒスイ)で破った時のエピソードに絡めて、「人事天命」の言葉を使ってます。
謝公(謝安のこと)、宗社の存亡を以て之を決す。人事を尽くして天命に聴(まか)す。
謝安は国の存亡をかけ、一大決心をした。 やるべきことはやった。あとは天命にまかせる。
謝安のエピソードというのも結構面白いです。「屐歯(ゲキシ:下駄の歯)の折(お)るるを覚えず」という故事として残っています。
晉の謝安は、淝水(ヒスイ)の戦い(383年)で、甥の謝玄が前秦の苻堅(フケン)を破ったという知らせを受け取りました。そのとき、謝安は客と囲碁の最中でした。客がどうなったかを聞いたところ、「勝ったようだ」とだけ言って、特に喜びを見せませんでした。
やがて碁が終わり、客が帰った後、それまでの平然とした振りを捨てて、大喜びをしました。
客を見送った帰りに、敷居に下駄をぶつけ歯が折れてしまったのも全然気づかないほどの喜びようでした
配布ミスや回収遅れ、ICプレーヤーの不足 等々、それでなくとも緊張を強いられている受験生の皆さん、大変でしたね。
やることを全てやり終えて臨んだ、『センター試験』と思います。
そんな心境になれないかもしれませんが、あとは天命に聴(まか)せましょう。