【隴(ロウ)を得(え)て蜀(ショク)を望(のぞ)む】と訓読されます。
一つの望みを遂げたのに、更にまた別の望みを持つことを表す四字熟語です。
人の欲望にはきりがないというたとえです。
後漢(ゴカン)の光武帝(コウブテイ)が【隴】の地を手中に納めたのに、更に【蜀】を手に入れたいと望んだ、ということから【得隴望蜀】の故事が生まれました。
帝(テイ)既(すで)に隴右(ロウユウ)を平らげて曰く、
光武帝はすでに隴右を平らげたが、あるとき言うには
人自ら足(た)るとせざるに苦しむ。
人間の欲望は切りのないもので、これでよいと満足できず、そのために苦労する。
既に隴を得て復(また)蜀を望む、と。
自分が欲しいと思っていた隴が手に入ったと思ったら、また更に蜀も欲しくなった。
十二年、大司馬(ダイシバ)呉漢(ゴカン)等を遣わし兵に將とし、
建武十二年、大司馬の呉漢等を遣わし、兵に将として
征南大将軍岑彭(シンポウ)に会して蜀を伐(う)たしむ。
征南大将軍の岑彭の率いる兵隊たちと一緒になり、蜀を征伐させた。
以上は『十八史略』での記述ですが、元になった『後漢書』岑彭伝では、隴を攻めていた岑彭将軍に光武帝が書簡を送りました。その中に【得隴望蜀】がでています。
人は足るを知らざるに苦しむ。既に隴を平らぐれば、復た蜀を望む。
一たび兵を発する毎(たび)に、頭髪、為に白し。
結局、建武十二年、蜀も漢の版図に入りました。