【路(みち)を異(こと)にして帰(き)を同(おな)じうす】と訓読されます。
その路は異なっても帰着するところは同じである、ということから、事業は異なっていても目指すところは同じであるということを表しています。
【路】は道の意味ですが、ここでは方法のたとえです。
【帰】は、帰着のことで、目的のたとえです。
【異路同帰】は『淮南子:エナンジ』の本経訓:ホンケイクン、というところにでています。
『淮南子』は漢音では『ワイナンシ』ですが、書名としては呉音の『エナンジ』で呼ばれています。
『淮南子』を編纂した劉安(リュウアン)は「淮南王」ですが、こちらは「ワイナン」と呼ばれます。
五帝三王は、事を殊(こと)にして指(シ)を同じうし、
五帝・三王は、その事業は殊なっても旨(むね)とするところは同じであり、
【路(みち)を異(こと)にして歸(き)を同(おな)じうす】。
その路は異なっても帰着するところは同じである、
晩世の學者は、道の一體なるところ、
末世の学者は、道が万物を一体とするものであり、
徳の總要する所を知らず。
徳が万物を総括するものであることに気が付かないでいる。
五帝といいますのは、古代中国の伝説の五人の帝王で『史記』によりますと
黄帝(コウテイ)、顓頊(センギョク)、帝嚳(テイコク)、堯(ギョウ)、舜(シュン)で、
三王といいますのは、夏(カ)の禹王(ウオウ)、殷(イン)の湯王(トウオウ)、周の文王です。
事績はそれぞれ異なるが、よい統一国家を作ろうという目的は同じだったという意味で登場しています。
『淮南子』は、前漢の武帝の頃、淮南王劉安(B.C.179年~B.C.122年)が学者を集めて編纂させた思想書です。
老荘思想を中心に儒家・法家・兵家・陰陽家などの思想を取り入れ、治乱興亡から逸事(イツジ:世の中に知られていない事実)までの諸々が記載されています。
一般的には雑家の書に分類されています。