思慮分別がなく、ただ血気にはやる勇気のことです。
『孟子』梁(リョウ)惠王・下にでています。
斉の宣王(B.C.319~B.C.301)が
隣国と交際するのに、なにか良い方法があるだろうか、と
孟子に尋ねました。
孟子は、過去の名君といわれた人達の話をして、まず自国を仁の徳で治めると、
隣国との交際もうまくいきます、と言う様な事を説いている中で、
【匹夫之勇】という言葉が出てきました。
王曰、大哉言矣、寡人有疾、寡人好勇、
王曰く、大(よ)くも言えり、されど寡人(カジン)には疾(やまい)有り、寡人勇を好むと。
宣王が言いました、それは素晴らしい言葉です。だが、私には悪い癖があります。
勇敢を好むのです。
對曰、王請無好小勇、
對(こた)えて曰く、王請(こ)う小勇を好むこと無(なか)れ、、
孟子が答えて言いました。王よ、どうか小さな勇を好まないでください。
夫撫劍疾視曰、彼惡敢當吾哉、
夫(そ)の劍を撫(にぎ)り疾視(シッシ:目をいから)して曰く
たとえば、剣を握って相手をにらみつけて、
彼惡敢當吾哉、
彼、惡(いずく)んぞ敢(あ)えて吾に當(あた)らんやと、
かなうものならかかってこい、と言ったとします、
此匹夫之勇、敵一人者也、
此れ匹夫の勇にして、一人に敵する者なり、
これは匹夫の勇で、一人を相手にするだけのものです。
王請大之、
王請う之を大にせよ、
王よ、どうかこんな小さな勇ではなく、大きな勇をお持ちになって下さい。