身分や地位などによらない、心からの付き合いのことを言ってます。
【布衣:フイ】は布で作った衣服のことで一般庶民の着物です。それで無位無官の人のことをいいます。
【完璧】や【刎頸の交わり】にでてきます趙の藺相如(リンショウジョ)に関係する四字熟語です。
【布衣之交】は、【璧(ヘキ)を完(まっと)うす】べく藺相如が秦王と対峙した時の場面での台詞です。
出典は『史記』廉頗(レンパ)藺相如(リンショウジョ)列伝です。
秦王(昭襄王:ショウジョウオウ)、章台に坐して相如を見る。相如璧を奉じて秦王に奏(すす)む。
秦王、相如を引見した。相如は璧を捧げ持ち、秦王に奉呈(ホウテイ)した。
秦王大いに喜び、伝へて以て美人及び左右に示す。左右皆万歳を呼ぶ。
秦王は、喜色満面、侍女や近侍の者に見させた。近臣達は万歳を呼んだ。
相如、秦王の趙の城を償(つぐな)ふに意無きを視(み)、乃(すなは)ち前(すす)みて曰く
相如は、秦王が趙に城を与える気持ちが無いと見て、進み出て言った、
璧に瑕(きず)有り、請(こ)ふ王に指示せん、と。
その璧には瑕がございます。お教えします。
王、璧を授(さづ)くるに、相如因(よ)りて璧を持ち、卻立(キャクリツ)して柱に倚(よ)り、
王は璧を渡した。相如は璧を持ったまま柱の側に立ち、
怒髮上(のぼ)りて冠を衝(つ)き、秦王に曰く
【怒髮衝冠:ドハツショウカン】して、いいました。
大王璧を得んと欲し、人を使はし書を発して趙王に至らしむ。
大王は璧を手に入れようとして、人を使はして趙王に書簡を寄せられました。
趙王悉く群臣を召して議するに、皆曰はく、
趙王は全ての家臣を召して協議なさいましたが、皆いいました。
秦は貪にして、其の強きを負み、空言を以て璧を求め、償城恐らくは得べからず、と。
秦は欲深で、強さをたのんで、口約束だけで璧を取ろうとしている。
代わりの城は恐らく手に入れることはできないだろう。
議秦に璧を予ふるを欲せず。
協議は秦に璧を与えないことになりそうでしたが、
臣、以為へらく【布衣の交はり】すら尚(な)ほ相(あい)欺(あざむ)かず、況(いわ)んや大国をや。
私は思いました、無位無官の者でさえ、互いに騙(だま)すことはしない。
まして大国どうしではなおさらだ。
途中省略します。
臣、大王の趙王に城邑を償ふに意無きを観、故に臣復た璧を取る。
私は、大王が趙に城を与えるおつもりがないと見ました。それで璧を取り返しました。
大王必ず臣を急にせんと欲せば、
大王がどうしても私を追い詰めるならば、
臣の頭今璧と倶(とも)に柱に砕けん」と。
私の頭を璧もろとも柱に打ちつけて砕いて見せましょう。