役に立つときは重用されるが、用が無くなれば追い払われることを譬えた四字熟語です。
漢の建国に功績のあった韓信が、謀反を疑われて高祖劉邦に捕えられた時に言った言葉です。

『史記』淮陰侯(ワイインコウ）列伝にでています。

　　信曰、果若人言。
　　信曰く、果たして人の言の如し。
　　　　　韓信は言った、果たして人の言ったとおりだった。

　　狡兔死、良狗亨、
　　狡兔（コウト）死して、良狗（リョウク）亨（に）られ、
　　　　　すばしこい兔が死ねば優れた猟犬は（猟の必要がなくなって）煮殺され、
　　高鳥尽、良弓蔵、
　　高鳥尽きて良弓蔵（かく）され、
　　　　　天高く飛ぶ鳥がいなくなれば、良い弓はしまわれ
　　敵国破、謀臣亡。
　　敵国破れて謀臣（ボウシン）亡ぶ。
　　　　　敵国が負ければ智謀にすぐれた家臣は無きものにされる。

　　天下已定、我固当亨。
　　天下已（すで）に定まりたれば、我固（もと）より当（まさ）に亨（に）らるべし。
　　　　　天下はすでに平定された。私は当然殺されるはずだったのだ。
　　上曰、人告公反。
　　上（ショウ）曰く、人、公（コウ）反（そむ）くと告ぐ。
　　　　　高祖は言った、ある者が、貴公が謀反を起こしたと告げて来たのだ。
　　遂械繋信。
　　遂に信を械繋（カイケイ：手かせ足かせ）す。
　　　　　そうして韓信に手かせ足かせをはめた。
　　至雒陽、赦信罪、以為淮陰侯。
　　雒陽（ラクヨウ）に至りて信の罪を赦し、以て淮陰侯（ワイインコウ）と為（な）す。
　　　　　洛陽の地に到着してから、韓信の罪を許して、淮陰侯としたのだった。

同義の四字熟語に【狡兔走狗：コウトソウク】がありまして、こちらは『史記』越王句踐世家にでています。