喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、のさまざまな人間感情を並べたことばです。
儒学のテキストである四書(大学・中庸・論語・孟子)のなかの一つ『中庸』に、【喜怒哀楽】の発露は節度に適っていることが大切である、と難しいことを言っています。
『中庸』の最初にでています。
喜怒哀樂之未發。謂之中。
喜怒哀楽の未だ発せざる、之を中と謂ふ。
喜・怒・哀・楽などの感情が動き出す前の平静な状態、それを中という。
(偏りも無く、過不及もなく中正な状態)
發而皆中節。謂之和。
発して皆な節に中(あた)る、之を和と謂ふ。
感情が動き出しても、それらがみな然るべき節度にぴたりと適っている状態、
それを和という。
(感情の乱れがなく、正常な調和を得ている状態)
中也者天下之大本也。和也者天下之達道也。
中は天下の大本(タイホン)なり、和は天下の達道(タツドウ)なり。
中は世界中の(万物の)偉大な根本であり、和こそは世界中に通用する道である。
致中和。天地位焉。萬物育焉。
中和を致して、天地位(くらい)し、萬物育(イク)す。
中と和とを実行してきわめれば(人間世界だけでなく)全宇宙の有り方も正しい状態に
落ち着き、あらゆるものが健全に生育する。
『中庸』は、もともと『礼記』中の一篇で、礼記中庸篇として伝えられていました。
『史記』で中庸は子思の作であると記載されて以来、これが通説となっていますが異説もあります。
『大学』が四書の入門であるのに対し、『中庸』は四書の中で最後に読むべきものと言われてます。
『中庸』の注釈として、朱子の『中庸章句』が有名です。