【目を瞋(いか)らし胆を張る】」と訓読みされます。
恐ろしい事態に直面しても、気力・胆力をすえて相対することをいう四字熟語です。
【瞋目】は、目を怒らせると言う意味です。
【瞋】は、「目」+「眞」の形声文字です。「眞」は音を表わす符号の役目なのですが、
多少意味も関係しています。
「眞」は「匕」と「県」を組み合わせた会意文字です。
「匕」は人を逆さまにした形で、死者の形。
「県」は首を逆さまに懸けている形で、結局「眞」は、不慮の災難にあった行き倒れの人をいいます。
「眞」は死者で、それはもはや変化するものではないから、永遠のもの、眞の存在の意味になり、
「まこと」の意味となったそうです。 白川静『常用字解』より
【張胆】は、胆(きも)を大きくする、勇気を持つ。
『史記』張耳(チョウジ)・陳余(チンヨ)列伝にでています。
秦末、在野の賢者として名を馳せていた張耳と陳余が、『陳勝(チンショウ)・呉広(ゴコウ)の乱』で秦滅亡のキッカケを作った陳勝に意見を求められました。
周囲から、楚王となるように、と薦められた陳勝はこれを二人に相談しました。
二人が答えていうには
秦は非道な行ないをし、人の国を破壊し、人の子孫を断絶させ、人民の力を疲れさせ、
その財産を奪い尽くしました。
将軍目を瞋らし膽を張り、
将軍は目を怒らせ勇を振るって、
萬死して一世を顧みざるの計(はかりごと)を出だし、
必死の覚悟で自分の命を顧みない計略を立て
天下の為に殘を除かんとするなり。
天下の為に暴虐な秦を除こうとしておられます(それはそれで結構なことですが)。
今始めて陳に至りて之に王たらば、
今、やっと陳に来たばかりの状態で王となられては、
天下に私を示すなり。
天下に私心をしめすこととなってしまいます。
願はくは将軍王たる毋かれ。
どうか将軍、王とならないように。
張耳と陳余は、王になるにはまだ早い、その前にやることがあるでしょう、と諫めましたが
陳勝は結局、そのまま即位して王となってしまいました。