何かひとつの行為によって、それとともに二つのことで損失を生じることを表わした四字熟語です。
この反対が【一挙両得】です。こちらは『東観漢記:トウカンカンキ』耿弇(コウエン)伝にでています。
【一挙両失】は、『戦国策』燕策にでています。
戦国末期、燕国第43代目の王喜(オウキ:B.C.254~B.C.222)の時のお話です。
燕の西隣にある趙を攻めるにあたり、名将樂毅(ガッキ)の子である樂閒(ガッカン)に意見を求めました。
樂閒は、趙は戦争なれして、何倍の軍勢をしても攻められないと言いました。
王喜は激怒して趙を攻めました。
燕は大敗し、樂閒は趙へ亡命してしまいました。
燕王・王喜は書簡をもって樂閒に詫び、再び燕を助けてほしいと懇願しました。
本より以て寡人の薄きを明らかにするを為さんと欲して、
もともと私の薄徳を(天下のい)表明したいと考えてのことであったとすれば、
而も君、厚きを得ず、
(そうしたところで)あなたは情の厚い人だとの評価を得られるわけではなく、
寡人の辱を揚げて、
また、私の恥を(天下に)宣伝したいとのことであれば、
而も君、榮を得ず、
(そうしたところで)あなたは榮譽を得られるわけではない。
此れ一挙して両失するなり。
となれば、これは一挙に二つのことを失うことになる。
燕王の諄々たる懇情にも、樂閒は自分の考えを採用してくれなかったことを怨んで、ついに、趙国にとどまり返事を出しませんでした。
最終的に、燕はB.C.222年 秦に滅ぼされます。
自分が善く思われようとして、他人を悪しざまにいうことはよくあることですが、
それは同時に自分もまた同じレベルで愚劣であることを明かしていることになります。
両者にとって何も得るものはない。つまり【一挙両失】です。