泰山と北斗星のことを言っているのですが、人々に、その道の大家として仰ぎ尊ばれる人のことを言う四字熟語として使われます。
学問・芸術などある分野の第一人者のたとえで、略して【泰斗】とも言われています。
【泰山】は中国山東省にある名山。
標高1,545メートル。五岳(泰山:タイザン・東岳、嵩山:スウザン・中岳、華山:カザン・西岳、
恒山:コウザン・北岳、衡山:コウザン・南岳)の長といわれる名山です。
秦の始皇帝や前漢の武帝が、封禅(ホウゼン:天地を祀る儀式)を執り行なったことでも
知られています。
1987年に世界遺産として登録されました。
【北斗】は北斗七星のことです。
【泰山北斗】の四字熟語は、唐宋八大家の一人に数えられ、
「文章は儒教の道徳、理念を明らかにするためのものである」と主張し、
豊かな文学的才能によりすぐれた文章を残した韓愈を、『新唐書』韓愈伝賛で称えた中にあります。
自愈没、其言大行、学者仰之如【泰山北斗】云。
愈(ユ:韓愈のこと)没して自(よ)り、其の言大いに行なわれ、学者之(これ)を仰ぐこと
【泰山北斗】の如しと云う。
韓愈が亡くなってから、その学もますます盛んとなり、学者達は
【泰山北斗】を仰ぐように、韓愈を尊敬しました。
泰山は、ちょうど日本人が富士山を仰ぐと同じように、古来から名山として敬われています。
【泰山】を含んだ四字熟語に
【泰山圧卵:タイザンアツラン】 物事がいとも簡単に行なわれることの譬えです。
【泰山鴻毛:タイザンコウモウ】 非常に重いものと、軽いもの、の隔たりが大きいことの譬えです。
【泰山之安:タイザンのやすき】 どっしりと安定していることの譬えです。
【泰山梁木:タイザンリョウボク】 泰山と、家の大事な梁(はり)の意味から、賢者のことを言います。
また、【北斗】につきましては、『論語』為政篇の一番最初に、【北辰】という言葉で出てきます。
子曰く、政(まつりごと)を為すに徳を以てすれば、譬(たとえ)ば北辰(ホクシン:北極星)の
其の所に居て、衆星(シュウセイ)の之に共(むか)うが如し。
為政者が徳を以て政治を行えば、喩えば北極星を中心に天体が回転するように、
役人達もまじめに仕事に励むようになるものである。
7月1日は「山開き」です。
富士山も世界遺産になってから初めての「山開き」です。