さまざまに心を悩ませながら創意工夫を凝らすことを言います。
【意匠】は、工夫をめぐらすこと。趣向、工夫を意味します。
【惨憺】は、心をなやますさま、苦心する様子を言います。【惨淡】・【惨澹】とも書かれます。
【惨憺】は、擬態語です。その中で「サンタン」と「ン」の韻を含んでいる畳韻語と言われて
います。
「曖昧:アイマイ」。「齷齪:アクセク」。「混沌:コントン」。「団欒:ダンラン」。「潑剌:ハツラツ」。
「氾濫ハンラン」。「馥郁フクイク」。「霹靂:ヘキレキ」。「朦朧モウロウ」。「爛漫ランマン」。
これらの熟語は、みな擬態語です。まだまだ沢山あります。韻を同じくする熟語は大抵、
擬態語のようです。
【意匠惨憺】は杜甫が、玄宗皇帝に仕えていた曹覇(ソウハ)の絵画の技量を褒めた言葉です。
玄宗は自分の愛馬「玉花驄:ギョクカソウ」を多くの画工に描かせましたが、満足しませんでした。
そこで曹覇に描かせたところ、【意匠惨憺】、苦心の末、すばらしい絵を創り上げました。
【意匠惨憺】の四字熟語は、杜甫の「丹青引贈曹将軍覇詩」:7言×40句の詩の中にでてきます。
17) 先帝の御馬玉花驄、
先帝の御乗馬の玉花驄は、
18) 画工は山の如く貌(ばく)するも同じからず、
画工は画くが、似るもの無し
19) 是の日牽來赤墀の下、
この日赤くぬった階の所までひきつれて来た
20) 迥(はる)かに閶闔(ショウコウ)に立てば長風生ず、
はるか彼方宮門に立つとさっと一陣の風がまきおこる
21) 詔して謂う将軍絹素を払へと
将軍に写生を促す天子のお言葉
22) 【意匠惨憺】たり経営の中、
構図をあれこれ苦心して、考え抜いて工夫して
23) 斯須(シシュ)にして九重に眞龍出づ、
描けば、やがて、宮中に龍が現れたかの迫真である。
24) 万古の凡馬を一洗して空し
古来描かれて来た凡馬の姿、一掃されて空し。
この詩の中の7句、8句のところに
『丹青知らず、老の将に至らんとするを。富貴は我に於て浮雲の如し』がでています。