【心を以て心に伝う】と読みまして、文字によらないで、師匠から弟子へと真理を伝授することを言います。
もとは仏教用語で、特に禅宗で、言葉や文字では表せない奥深い仏教の真髄を、【以心伝心】で伝えていたことによります。
唐の時代に、圭峰宗密(ケイホウシュウミツ。780年~841年)というお坊さんが、禅の諸家の文句や偈頌(ゲジュ)を編集した『禅源諸詮集:ゼンゲンショセンシュウ』(佚書:イッショ。)の序文「都序(トジョ)」である『禅源諸詮集都序:ゼンゲンショセンシュウトジョ』に【以心伝心】という四字熟語が使われたそうです。
その後、北宋代に道原(ドウゲン)によって編纂された禅宗を代表する燈史(仏教界における歴史書、とくに禅宗の史書を指します)である『景徳伝灯録:ケイトクデントウロク』には
「仏の滅する後、法を迦葉(カショウ)に対し、心を以て心に伝う」
と書かれているそうです。もとになっているお話は
あるとき釈迦は霊山に弟子たちを集めて説教をしました。そのとき釈迦はハスの花を手にして、
それを捻って弟子たちに示した。弟子たちは、その意味を図りかねてみんな黙っていました。
たった一人迦葉(カショウ)だけは、釈迦の意味するところを悟り、にっこり微笑した。
釈迦は迦葉を認めてこう言いました。
「わたしには正法眼蔵(ショウボウゲンゾウ)、涅槃妙心(ネハンミョウシン)、実相無相、微妙法門、がある。これを不立文字(フリュウモンジ)、教外別伝(ともに深奥の理は言葉などでは表現できるものではないから、心から心へ伝えて心で悟るということ)で、迦葉、お前に託そう」
つまり、釈迦は迦葉に仏教の真理を伝えたが、それは【以心伝心】で行われたのです
ハスの花を捻ってそして迦葉が微笑んだというところから【拈華微笑:ネンゲミショウ」ということが、【以心伝心】の象徴であったようです。。
これが【以心伝心】の故事です。
『今日の四字熟語 N0.506【拈華微笑】も参考にして下さい。
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