十分に考えたうえで、思い切って実行することを表す四字熟語です。
【熟慮】は、十分に念を入れてかんがえることです。【熟】は「煮る」、「果物などがジュクする」、
「じっくりと」の意味があります。
【熟】は「塾:ジュク。まなびや」と誤用されやすいので注意して下さい。
【断行】は、思い切って行うことをいいます。
【熟慮断行】は、十分に考えたうえで、思い切って実行すること、という意味ですが順序があります。
先ず【熟慮】です。事前に色々な問題を想定し、また万が一のことも念頭に置いて、十分に考えて結論を出すことです。考えただけではだめなのです。結論を出さなければいけません。
【熟慮】して結論が出てから、【断行】です。
その【断行】は反対や障害があっても思い切って行うことです。中途半端な見せかけの決意ではいけません。
歴史上有名な断行が、『史記』李斯(リシ)列伝にでています。
秦の始皇帝の死後、宦官(カンガン)の趙高(チョウコウ)が陰謀を画策し、胡亥(コガイ:始皇帝の子)を
唆(そそのか)し、公子扶蘇(フソ:始皇帝の長子。胡亥の兄)を殺して帝位に就くことを強要したときの
言葉です。
小事を顧みて大事を忘れるならば、後に必ず害があり、疑い躊躇(ためら)っていると、
あとで必ず後悔します。
断而敢行、鬼神避之。
断じて敢行(カンコウ)すれば、鬼神も之を避け。
断固たる決意をもって行動すれば、鬼神でさえ道をよけ
後有成功。願子遂之。
後に成功有り。願はくは子之を遂げよ。
後に成功があります。どうか遂行なさってください。
胡亥は趙高の言いなりで、始皇帝の跡をついで、二世皇帝となりました。
三年後、二世皇帝胡亥は趙高に殺されます。
趙高は、扶蘇の子である子嬰(シエイ)を王位につけます。
王位について間もなく、子嬰は趙高を殺します。
その子嬰もB.C.206年、項羽に殺され、初の統一王朝秦も15年で幕を閉じました。
【断行】の前の【熟慮】に問題があったようです。