いろんなことができるけれども、どれも中途半端で役に立つものが無いという意味です。
【鼯鼠】は、「むささび」のことです。「むささび」よりひとまわり小さい「ももんが」も【鼯鼠】と表記
されます。
【鼠】の部に所属する漢字表記の小動物としまして、【鼬 チュウ:いたち】、【鼴 エン:もぐら】などが
あります。
【鼯鼠之技】は『荀子』・勧學篇にでてくる、四字熟語です。
鼯鼠は五技(ゴギ)にして窮(キュウ)す。
ムササビは五種類の才能を持っているが
(何でもやれるようだが、実際にその才能を発揮する場面において)
困窮してしまう。
鼯鼠の五技とは、つぎのものを言うそうです。
① 能(よ)く飛べども ・・・・・・・・・・・ 屋に上がること能(あた)はず
(空中を飛べるが) (屋根には届かない)
② 能く縁りてよぢ登れども ・・・・・・・・・・ 木を窮むること能はず
(木に登れるが) (天辺までは登れない)
③ 能く游げども ・・・・・・・・・・・・・・・・ 谷を渡ること能はず
(泳ぐことは出来るが) (谷を泳ぎきることは出来ない)
④ 能く穴ほれども ・・・・・・・・・・・・・・ 身を掩(おお)ふこと能はず
(穴を掘ることは出来るが) (身を隠すことは出来ない)
⑤ 能く走れども ・・・・・・・・・・・・・・ 人に先んずること能はず
(地面を走るが) (人には及ばない)
何でもできそうだが、どれも中途半端で、徹底したものがなければ、結局は何もできないのと同じだ。
と荀子はきびしいです。
『荀子』・勧學篇にはミミズを引き合いに出して、一歩一歩着実に進むことによって、ついには功を成すことができる、すなはち成功する、と言ってます。
それに反して、ミミズは鋭利な爪や牙も、また頑丈な筋肉や骨格も持たないのに、泥土を食べ、
地下水を飲んで生きていけるのは、心をただ一点に集中するからである。
同義の四字熟語に
【器用貧乏:キヨウビンボウ】
【螻蛄之才:ロウコのサイ】
があります。