【三たび思いて後に行なう】と訓読みされまして、三たび思い考えた後に行動すると言うことから、
物事を行うとき、熟慮したのち、実行することを表す四字熟語です。
【三思後行】の言葉だけを見ますと、軽擧を戒める四字熟語のように思われます。
実際、今は一般的にそう理解して構わないと思うのですが、
『論語』公冶長(コウヤチョウ)のなかで、【三思後行】は優柔不断、とまでは云ってませんが、それに近い云い方です。
季文子、三思而後行。
季文子(キブンシ)三たび思いて而(しか)る後に行う。
魯の家老季文子は、何をするにも三度も考えてから実行に移しました。
子聞之曰、
子之(これ)を聞きて曰く、
これを聞いた孔子は
再斯可矣。
再びせば斯(こ)れ可なり。
二度考え直してやれば結構だろう。思慮も度が過ぎると、優柔不断となる。
季文子は、孔子が生まれる15~6年前に亡くなっている人で、魯の宣公(センコウ:B.C.608~B.C.591)・成公(セイコウB.C.590~B.C.573)・襄公(ジョウコウB.C.572~B.C.542)の三君に仕えた人です。
季文子は極めて、思慮綿密、用意周到の人であったようです。学識もあり、才智もあり、内外の信頼を一身に集めたことが、『春秋左氏伝』にかなり好意的に記載されています。
孔子は優柔不断を嫌ってましたから、「再びせばこれ可なり」と謂ったのでしょう。
思慮深いことは結構ですが、決断力と実行力が伴わなければ、優柔不断の謗(そし)りを免(まぬが)れません。
逆に、決断力・実行力があるのはいいのですが、思慮を欠くと無鉄砲と言われてしまいます。
この辺の、塩梅が難しいようです。