【氷炭(ヒョウタン)は器(うつわ)を同じくして久(ひさ)しからず。】と読みまして、氷と炭とは一つの器の中で長くは持たない、という意味です。
出典は『韓非子』顯學第五十です。
夫冰炭不同器而久、
夫れ冰炭は器を同じくして久しからず、
いったい、氷と炭火とは同じ器に入れたままでは長くは持たないし、
寒暑不兼時而至。
寒暑は時を兼ねて至らず。
寒さと暑さとは同時にやってくることはない。
雜反之學、不兩立而治。
雜反の學は、兩立して治まらず。
同様に、雑駁で矛盾した学説は両立させたままでうまくいくはずがない。
今兼聽雜學繆行同異之辭、
今、兼ねて雜學繆行(ビュウコウ)同異の辭を聽かば、
いま、雑駁な学説や矛盾した行動や異同の多い言葉をすべて聞き入れるというのでは、
安得無亂乎。
安(いずく)んぞ亂るる無きを得んや。
どうして混乱しないでおれようか。
聽行如此、
聽行(チョウコウ)此(か)くの如し、
聞いたり行ったりすることがこのようでは、
其於治人、又必然矣。
其の人を治むるに於けるも、又必ず然(しか)らん。
この君主が人を治める治め方も、きっと混乱したものになるだろう。