世の中の人々を教え導く人のたとえを表す四字熟語です。
【一世】は、世の中という意味です。
【木鐸】は、二つの意味がありまして
① 振り子(舌)を木で作った、金属製の鈴を言います。昔、命令を発するときに鳴らして
大衆を戒めたもの。文事には木鐸、武事には金鐸を用いたそうです。
② 世の人を教え導く者。
【一世木鐸】の場合は、②の世の人を教え導く者の意味になります。
出典は『論語』八佾(ハチイツ)です。
儀(ギ)の封人(ホウジン)見(まみ)えんことを請(こ)ひて日く、
(孔子一行が衛の国境に近い)儀という村にとまった時、関所の役人が孔子に面会を求めた、
君子の斬(ここ)に至るや、吾(われ)未(いま)だ嘗(かっ)て見ゆること得ずんばあらずと。
立派なお方がお越しの節は、いつもお目通り願っております、と云ったので、
従者之を見えしむ。
お供の門人達は孔子に面会させてやった。
出でて日く、二三子(ニサンシ)、何ぞ喪(ソウ)を患(うれ)へんや。
やがて、孔子の部屋から出てきた関所の役人は、あなたがたは、先生が位を失って本国を
去られたことなど、少しも悲しむ必要なんかありませんよ。
天下の道無きや久し。天将(まさ)に夫子(フウシ)を以て木鐸(ボクタク)と為さんとす。
今や、道義が失われて久しいので、天が先生を諸国に周遊させて、正道にもどそうとして、
木鐸(警醒)の役目を果たさせようとしているのですよ。
孔子が魯の大司冦(ダイシコウ:総理大臣?)の職を辞し(というよりは、国を追われて)衛の国に向かった時の一コマではないかと言われています。孔子、56才頃の出来事です。