【夫(そ)れ孝(コウ)は徳(トク)の本(もと)なり。】と読みまして、親孝行は人情の自然に発するものであるから、すべての道徳の根本である、という意味です。
出典は『孝経』開宗名明義章第一です。
子曰、夫孝徳之本也。教之所由生也。
子曰く、 夫れ孝は、徳の本(もと)なり、教(おし)への由(よっ)て生ずる所なり。
孔子が言いました、 孝とは徳の本であり、教えに由りて生育されるものである。
復坐、吾語汝。
復(かへ)り坐れ、吾れ汝に語(つ)げん。
戻って座るがよい、お前にその真意を教えよう。
身體髮膚。受之父母。不敢毀傷。孝之始也。
身體髮膚(シンタイハップ)、之れを父母に受く、敢(あへ)て毀傷(キショウ)せざるは、孝の始なり。
そもそも我が身体、髪、皮膚、ありとあらゆるものは、父母より受けたるものである。
これを一時の惑いに失うこと無く、その生を尽くして全うするは、孝の始めである。
立身行道。揚名於後世。以顕父母。孝之終也。
身を立て道を行なひ、名を後世に揚げ、以て父母を顕(あらわ)す、孝の終なり。
身を修めて道を行ない、名を後世に揚げて敬せらるに至る、このようにして父母を顕し
先祖を讃(たた)えるに至らしめるは、孝の成就である。
夫孝。始於事親。中於事君。終於立身。
夫れ孝は、親(おや)に事(つか)ふるに始まり、君に事(つか)ふるに中(チュウ)し、
身(み)を立つるに終(おは)る。
孝というものは親に事(つか)えるに始まり、君に事(つか)えて全うし、身を立てて終える。