人の教えや言葉などを、常に心に銘記して、忘れないことを表す四字熟語です。
【拳々】は、両手で大事に、ものを捧げ持つ意味です。
【服膺】は、胸にとどめて忘れないようにする意味です。
【服】は、形声文字で、旁(つくり)である「服」の右側が音を著しまして、さらに意味としまして、
跪(ひざまず)いている人(卩)を後ろから手(又)で押さえつけて、屈服させることを示しています。
月(舟)は盤のもとの字で、盤は儀礼のときに使う器を表します。ですから【服】は盤の前で
何らかの儀礼を行うことを言います。
おそらく降服の儀礼にしたがうことをいうものである。 『常用字解:第二版』白川静著より。
【膺】は、鷹狩の時に、狩りの成果を占うため鷹を胸に抱いて、神の応答を求める状態を
表している字です。 『字通』より。
【拳々服膺】は『中庸』第二章の前半にでています。
『中庸』とは、「四書」の一つで、孔子の孫の子思(シシ)の手によると言われています。
『大学』が四書の入門であるのに対し、『中庸』は四書の中で最後に読むべきものと言われてます。
子曰、回之爲人也、
子曰く、回の人と為(な)りや、
孔子が云いました、弟子顔回の人がらは、
擇乎中庸、
中庸(チュウヨウ)を択(えら)び、
うまく中庸の徳を選びだして、
得一善、則拳拳服膺、
一善(イチゼン)を得(う)れば、則(すなわ)ち【拳拳服膺】して
これはという(中庸にかなった)善いことが得られると、慎重に身につけて、
而弗失之矣。
之(これ)を失(うしな)わず。
これを無くすることがない。
明治23年10月30日に発布された教育勅語(キョウイクチョクゴ)の、一番最後の文章のところにも
【拳拳服膺】がでています。
朕(チン)爾(なんじ)臣民ト倶(とも)ニ【拳拳服膺】シテ
私もまた国民の皆さんとともに、父祖の教えを心に銘記し、
咸(みな)其(その)徳ヲ一(いつ)ニセンコトヲ庶幾(こいねが)フ。
皆一致してその徳を学んでいくことを希(こいねが)っています。