春の日が穏やかで、光の明るいさまを表す四字熟語です。
【春は和(やわら)ぎ景(ケイ)明(あきら)か】と訓読されます。
【春和】」は春の和らいだ様子。
【景】は、「ケイ」と読みますと「ひかり」を表し、「エイ」と読みますと「かげ」を表します。
北宋の政治家で文人の范仲淹(ハンチュウエン:989年~1052年)に、科挙(カキョ)の同期で巴陵(ハリョウ)郡の太守滕子京(トウシケイ)がいました。その滕子京が岳陽楼を修復しまして、記念の文章を范仲淹に依頼しました。
それが『岳陽楼記:ガクヨウロウのキ』です。【春和景明】は、その中にでてきます。
300字あまりの文章です。【春和景明】がでているところを記載します。
春は和ぎ景明らかにして、波瀾(ハラン)驚かず、
おだやかな春の景色も明るく、洞庭湖の波もさわがず、
上下天光、一碧万頃(イッペキバンケイ)、沙鴎翔集(サオウショウシュウ)し、
天地に光みなぎり、青一色の水面が広々と続き、砂地にかもめが飛び交い、
錦鱗游泳(ギンリンユウエイ)し、岸芷汀蘭(ガンシテイラン)、郁郁青青(イクイクセイセイ)として、
錦鱗の魚が泳ぎ回り、岸辺の芷(よろいぐさ)、水際の蘭が、香を放って青々と伸び、
或いは長煙一空(チョウエンイックウ)、皓月千里(コウゲツセンリ)、浮光(フコウ)金を躍らし、
あるいはまた、たなびくもやが空一面にかかり、さえわたる月は千里を照らし、水に映る月は
金色におどり、
静影(セイエイ)璧(たま)を沈め、漁歌互いに答ふるがごときは、
静かに水面に浮かぶ月影は璧を沈めたようにみえ、漁夫の歌声が互いに歌い合うとき、
此の楽(たのしみ)何ぞ極まらん。
その楽しさは尽き果てぬ。
この文章の中に、『四字熟語辞典』でよく見られる、言葉が4句もでています。
【一碧万頃:イッペキバンケイ】 水面が、はるかかなたまで青々と広がっていること
【岸芷汀蘭:ガンシテイラン】 水辺で、草花が咲き乱れていること
【郁郁青青:イクイクセイセイ】 青々と生い茂り、よい香りを漂わせていること
【皓月千里:コウゲツセンリ】 月が輝き、はるか遠くまで照らすこと。
この『岳陽楼記』は、楼上からの風景は見る人の境遇によって違いが出てくることを述べ、最後に民の父母たる君子のあるべき姿として、有名な【先憂後楽:センユウコウラク】で結んでいます。
【先憂後楽:後楽園の由来】:天下の憂に先んじて憂い、天下の楽に後れて楽しむ。
今日は、「春分の日」。二十四節気の「春分の入り」で3月20日~4月4日は「春分」です
七十二候の第十候 【雀始巢】雀 始めて巢くう。 3月20日~3月24日 でもあります。