【鉄杵(テッショ)を磨(みが)く】と読みまして、鉄の杵(きね)を磨いて針を作る、という意味です。根気よく仕事に励む喩えを言います。
出典は曹学佺(ソウガクセン)の『蜀中名勝記』です。
盛唐(711年~766年)の李白が象耳山にこもって学問をしていたときのお話です。
在象耳山下。
象耳山の下に在り。
(李白は)象耳山のふもとに居ました
相伝、李白讀書山中、學未成棄去。
相伝ふ、李白書を山中に讀み、學未だ成らざるに棄てて去る。
伝わるところによりますと、李白は象耳山にこもって学問をしていましたが、
まだ成就してないのに、やめて去ってしまいました。
適過是渓、逢老媼方磨鉄杵。
適(たまたま)是の渓を過(わた)るに、老媼の方(まさ)に鉄杵を磨くに逢う。
(李白が、)たまたまこの渓流を渡ったとき、老婆が鉄の杵を磨いているのに出会っいました。
問、何爲。
問う、何(なに)をか爲(な)すと。
(李白が、)何をしているのですか、と尋ねると
曰、欲磨作鍼耳。
曰く、磨(みが)きて鍼(ハリ)を作(つく)らんと欲する耳(のみ)と。
老婆は、磨いて針を作ろうとしているのじゃ、と答えました。
白感其言、遂還卒業。
白、其の言に感じ、遂に還(かえ)りて業を卒(お)うと。
李白は、その言葉に感じ入り、引き返して学問を完成させました。