【衣(イ)は以(もっ)て寒露(カンロ)を覆(おお)うに趣(と)る。】と読みまして、衣服は冷たい雨露を防ぎしのぐだけでよい、という意味です。
人生、十分に満ち足り、贅沢で派手なことを避け、謙虚で自分の分に安んじ留まることを知って倹素の生活なすべきことを説いた『顏氏家訓』止足篇の一節です。
謙虚冲損、可以免害。
謙虚(ケンキョ)冲損(チュウソン)、以て害を免るべし。
謙虚で控え目にすれば、禍を受けることはない。
人生衣趣以覆寒露、食趣以塞飢乏耳。
人生、衣は以て寒露を覆うに趣(と)り、食は以て飢乏を塞ぐに趣るのみ。
人間の生活で、衣服は寒気雨露をしのぎ、食物は飢えを満たせたら、それでよい。
形骸之内、尚不得奢靡、
形骸の内も、尚ほ奢靡を得ず、
自分の体でさえ、なお贅沢は必要でないのに、
己身之外 而欲窮驕泰邪。
己が身の外にして 驕泰(キョウタイ)を窮(きわ)めんと欲せんや。
身体にかかわらぬことで、なんで奢侈をきわめる必要があろうか。