リーダーがメンバーを手厚くいたわることを表す四字熟語です。
中国戦国時代、呉起(ゴキ)が部下の腫れ物の膿(う)みを吸い取ったことによる故事から、生まれた四字熟語です。
『史記』孫子呉起列伝にあるお話です。
呉起( ?~B.C.38年)は、中国戦国時代の魏の将軍で、孫武(ソンブ)、孫臏(ソンビン)と並んで兵家の代表的人物とされています。
文侯は魏の歴代の君主の中でも一二を争うほどの名君で、積極的に人材を集め、魏の国力を
上昇させていました。
文侯が呉起を任用するかどうかを家臣の李克(リコク)に下問したところ、
「呉起は貪欲で好色ですが、軍事にかけては名将:司馬穰苴(シバジョウショ)も敵(かな)いま
せん」と答え、文侯は呉起を任用する事に決めました。
呉起は軍中において兵士と同じ物を食べ、同じ所に寝て、兵士の中に傷が膿(う)んだ者が
あると膿(うみ)を自分の口で吸い出してやりました。
ある時に呉起が兵士の膿を吸い出してやると、その母が嘆き悲しみました。将軍がじきじきに
あんな事をやって下されているのに、何故泣くのだと聞かれると
「あの子の父親は将軍に膿を吸っていただいて、感激して命もいらずと敵に突撃し戦死しました。
あの子もきっとそうなるだろうと嘆いていたのです」と答えました。
兵士達は呉起の行動に感激し、呉起に信服して命も惜しまなかったため、この軍は圧倒的な
強さを見せました。
【吮:セン】は、「口+允」の形声文字です。口をはなさず、少しづつ吸い続けることをいいます。
【疽:ショ】は、悪性の出来もので【癰:ヨウ。悪性の出来もの】の一種です。【疽】を「ソ」と読むのは
慣用読みです。
諸橋『大漢和辞典』で【吮疽之仁】のところを見ますと、呉起の故事が記載されていまして、
更に左へ目を移しますと、【吮癰舐痔:センヨウシジ】という四字熟語がでていました。
意味は『腫れ物の膿みを吸い、痔を舐めてまでして、人に媚び諂(へつら)うこと』です。