【獅子(シシ)身中(シンチュウ)の虫(むし)】と読みまして、獅子のからだに寄生して、ついには獅子を死に至らしめる害虫の事を云います。転じて、仏法を害する仏弟子のたとえです。また、味方でありながら、味方に害をなすものの喩でもあります。内部の裏切者、恩をあだで返す者の喩でもあります。
出典は『梵網經:ボンモウキョウ』下 四十八番目の自壊内法戒です。
若佛子。
若仏子、
仏弟子のお前たちに言っておこう
以好心出家而為名聞利養。
好心を以って出家せしに、名聞、利養の為に、
よい心がけで出家したのに、自分の名誉や利益を満たすために、
於國王百官前説七佛戒
国王百官の前に於いて七仏の戒を説き、
国王や家臣たちの前で、七仏の戒を説いて、仏弟子の罪をあげて、
橫與比丘比丘尼菩薩弟子作繫縛事。
横ざまに比丘比丘尼、菩薩の弟子の与(ため)に繋縛の事を作さば、
出家した僧侶や尼を逮捕させることがあれば、
如師子身中蟲自食師子肉。
獅子身中の虫の自ら師子の肉を食うが如し。
これは、『師子の身中の虫』が、自ら師子の肉を食うようなものである
非外道天魔能破。
外道の天魔すらよく破るに非ず。
『外道の天魔』でさえ、戒をこのようには破れまい。
若受佛戒者。
もし仏戒を受くれば、
もし、仏戒を受けたならば、
應護佛戒如念一子。
まさに仏戒を護ること、一子を念ずるが如く、
仏戒を護ることは、一子を思うように、
如事父母。
父母に事うるが如くなるべし。
父母に仕えるようにするものである。